<振り付け>の依頼を受けて、先方の稽古場のある地下鉄三田線高島平近くの駅で下車、猛暑きびしい真夏の8月のこと。
だるいやら眠いやら、夏バテらしく体調が不調。<振り付け>作業に影響なきようにと心で祈る。
地上に出ると赤信号。混み合ったトラックが歩道ぴったりと並んでいた。
歩道には金属性パイプの柵が続き、人命保障はなされていたが、二人ぎりぎりの逃げ場のない幅なので、背丈の高いトラックの行列はとても威圧的で、おいかぶさって来はしないかと、恐怖感に見舞われて気が疲れる。
自転車が見えた。歩道まっただ中を向かってくる。道路わきのビルの壁に身を寄せて道を広げてあげる。中年女性だった。風を切って目の前を去って行った。速度を落として呉れたらいいのにな…と思う。
数歩歩くと小路からまた自転車が現れた。一難去ってまた一難かと身構えて、矢張り身を寄せて道を作る。すると自転車は足をゆるめて「すみません。ありがとうございました…」。眼のキラキラした男の児、さわやかな笑顔の会釈を残して信号を渡って行った。途端に夏バテを忘れてしまう。
その日の<振り付け>は吾ながら満足の域。これは勿論、少年から受けた優しい挨拶の効果ゆえだ。
笑顔の挨拶は、不調な体調には何よりの薬なのであったようだ。ありがとう…私は改めて少年に感謝を送る。
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