この度、第25回舞踊ゼミナール「二胡の調べにのせて」の児童舞踊部門の振付を担当する貴重な勉強をさせて頂く機会を得た。
一つのテーマを四つのジャンルが創作して発表する舞踊ゼミナールの企画は、興味深く毎年観客の立場で楽しんでいたが、まさか自分が振付担当するとは思ってもいなかった。及び腰で1月末の顔合わせに出席してみると、他ジャンルの振付の方達は私よりずっと年齢はお若いのに、海外で勉強されてきた方など素晴らしいキャリヤの持ち主ばかりで、益々「私に出来るのかしら」と不安が広がった。
猿若先生より姜建華さんのCDを二枚聴かせて頂き、その中から課題曲は「中国のギャロップ」に決定。テーマ曲は児童舞踊向きの曲「競馬」と優しい旋律で始まる「青春にふれて」を選曲した。
振付を始める前に何度も曲を聴いている内に、プログラムにも書いたが、美しい澄み切った二胡の音から、野山で樹木・花々が芽吹いて来る早春の訪れを子供達が五感で感じ草原を友達と馬に乗って駆け巡り競い合い、春を迎える度に自分自身の成長を感じる風景のイメージが湧き、「競馬」と「青春に触れて」の二曲を合わせて「春」という題で表現してみた。
2月の寒い頃から児童達とのレッスンを開始。レッスンの最初に児童達に「どんな時に春が来たなと実際に感じたことがありますか?」と質問してみると、二人の児童が「桜が咲いたとき」と答えた。
学校生活以外にも稽古事などで目まぐるしいスケジュールをこなし、ゆっくり好きなゲームをする時間もないのか、レッスン中の数分の水分補給の休みタイムにもゲームを触りたがる都会の子供達には、まだ寒さの残っている頃頬を撫でる冷たい風に「あれ、春が近づいているかな」と春の予告の変化を感じたり、土のぽっこりした盛り上がりに「あ、福寿草が顔を出しそう」と発見したりして五感で春を感じる暇はないのかなと、何か大切なものを見過ごして成長しているのではないかと考えさせられた。
さぁ、この児童達にどうやって早春の訪れを感じて表現してもらえるのか、自分の創作力の拙さと共に不安は大きくなるばかりだった。然し本物の春を迎え3月4月とレッスンを重ねる内に、表現力が豊かになって来た。(稽古場で見守る先輩のお姉さんギャラリーの叱咤激励のアドバイスのお蔭もあったが−)これは美しい二胡の音でレッスンしていく内に、児童達の心の中に二胡の音が染込んでいき二胡の音に魔法を掛けられたのではないかと思うほどだった。乗馬の場面で客席から思わず笑いが沸いたようだが、児童達は一番初めに競馬のレッスンをリクエストするほど気に入っていた。
こうして迎えた本番当日の舞台稽古で他のジャンルの作品を初めて見た。課題曲の「中国のギャロップ」では、あっ、こんな表現もあったのかと若い方達の柔軟な発想・表現力に目を見張る思いだった。
私は「中国のギャロップ」を振付するに当って、大人のダンサー達の中に混じって踊るスクランブルを初めて経験する児童は舞台でどうするだろうという発想から、大人のダンサーが踊っている舞台に紛れ込んで「あっ,どうしよう」「うん,でも負けずに踊っちゃおう」と戸惑いながらも、ちゃっかりと楽しんでしまう児童の心理を表現してみたが、観客の皆様に可愛らしさとパワーをどの様に感じて頂けただろうか?
いま振り返ってみると、非常に緊張したが、私の心に沢山の種類のビタミン滋養剤を与えて頂き肥やしになった気がした。
この様なチャンスを与えて下さった舞踊ゼミナール委員会の皆様と姜建華さんに感謝とお礼申し上げると共に、是非これからもこの企画を継続して頂きたいと思った。
賀来 富士子 |