(敬称略)
■司会:猿若清三郎
お疲れ様でございました。
私も経験ありますけど、たぶん踊っているご本人たちはもちろん大変ですけれど、本番を見てらっしゃる振付者も肩こりますよね。
(笑)
まずはやはり皆様に見ていただいた作品の感じ方、一緒になるか異なるか、作品について「雨」という題をいただいた時の、どんなものを作ろうと思われたか伺っていきたいと思います。
■現代舞踊 井上恵美子
先にテーマをいただきまして、
雨と言ってもわりと平凡な感じがするものですから、迷ったのですけれども、次にダンサーを決めまして、その三人のダンサーが決まったところで大体決まったのですが、
わたくしは九州熊本県生まれなものですから、雨に関してはあまりシトシトとかパラパラとかいうのではなくて、近くに球磨川という三大急流が流れておりまして、小さい頃はまだダムが出来てなかったころで、雨が降るとそれが溢れて、学校に行くときには膝までつかってという頃を思い出しまして、あまりロマンチックな経験にあったことがないものですから、これは土砂降りで行こうと決めておりました。
それでダンサーの三人を見てこの子たちが一番生きる方法は何かと考えて、土砂降りの雨に打たれて花がだんだん輝きを増していくという、わたくしもガーデニングが好きなのですが、花びらが薄いものはどんどんぺちゃぺちゃになっていく、昨日あたりは家の花も無惨な姿になっているのですけれど、なぜか南国の花というのは強くて肉厚で丈夫なんですね、そういう姿が出たらいいなと。
熱帯雨林はどうだろうと考えたのですが、
雨に咲くという、今日出演しておりました、自分の娘なんですが、「花はつけないで」くれと、花はつけないでもいいのではないか、花でなくとも咲くもの、雨に打たれて美しく咲くのは人間だって同じじゃないかと考えれば?と、そして雨に打たれながら美しく輝いていくかどうかという方法を考えました。
音楽も一曲をつかっていたのですが、後半は違うものに切り替えました。
布を使いましたけれど、布の使い方も最初オブジェ下手の真ん中あたりにおいて、そこからどんどん取っていくという方法をしたのですが、 やっていくうちにやはり体で表現しようと、じゃあ布はどこから出すかと言うときに、身につけようと、 身につけているものをはいではいで皆さんにさらけだして、それでもきれいに、なおさらきれいに輝いていくというのがでたらいいねということから始まってああいう作品が生まれました。
■猿若
他の作品と違って花と結びつけたというところが特徴ありますし、すごくそれがよく出ていたと思います。
■井上
ありがとうございます。
ちなみにあの雨は軒下の雨(の音)です。
■猿若
そうでしょう。あれは実録音ですね。
■井上
先生のさっきのお話を伺っていて(※第一部で様々な雨音の比較を行った)、雨の音をいくつも聞いたのですが、この音しかないと。
椰子の木の葉っぱで出来た南国の雨の音に一番近かったものですから、これを使って表現しました。
■猿若
軒下、いわゆる雨、全部雨なんだけど、その雨をたまたま何かによってまとまって落ちていくという音にすると感情がでてきますね。すごくうまい使い方をしているなと思いました。
ところで、作品を創るときに他のジャンルって気にします?
■井上
いや気にしますね。やっぱり。下見の日にはものすごくハッスルして、どのようなものがくるかと思って。
■猿若
お客様実はですね、本日の昼間にはいわゆる舞台稽古をするわけなんですけど、その手前で一度、照明の先生や音響の先生と振りが出来上がった段階でこういう舞台でこういう音を使いという打ち合わせがございます。
そこが初めて振付者の皆さんが会う場所なんですよね。そこまではバラバラなんです。
ありがとうございました。
ではとなりの席のえっちゃん。
自分の作品に対してどんなことから入りましたか。
■日本舞踊 藤間恵都子
最初に雨をテーマにしてくださいという電話をいただいた最中にぱっと思い浮かんだイメージは、自分がガラスの内側にいて、ガラスの雨だれのたれいる外に、なぜか女性が建物の中から雨の中に飛び出してきて、わーっと泣き出しているようなシーンが、ちょっと浮かんだんです。
■猿若
それは自分の中にあります?(笑)
■藤間
ないです。(笑)
それでちょっとここから発想していきたいなということがあって、いろいろ考えて、その最初に浮かんだシーンをモチーフにして、皆様がガラスの中にいて、部屋越しに外のあの二人はどうなんだろうと様子を見ている感じです。
よくわたしは電車の中で、前に座っている方を見て、
あのお二人はどういう関係なんだろうなんて思っちゃうことがあるんですよ。
■猿若
ああ。(頷く)
■藤間
変な意味じゃないですよ。(笑)
二人が単にそこに座っているんじゃなくて、何か関係というか、親しい関係らしいけど、たとえば女の人ならば親子なのかな、おばさんと姪なのかなと、いろいろそういう風に考えちゃう癖があって、その辺の自分の空想力を織り込みつつ、作品を創ってみようかなと思いました。
雨宿りをした二人を皆さんが見て、あの二人はこの先なんとなくちょっと雰囲気的に、なにかありそうだけど… というところから始まって、その先を想像していくという感じです。
■猿若
あの、(振付者の)皆さんもそのような観察と言うことはありますか。
■一同
あります。あります。
■猿若
(客席の)みなさん、この後あまり舞踊家の前には座らない方がいいですよ。
(笑)
これは舞踊家だけではなく、演劇に携わる人や芸能に携わる人などには結構多いですね。
人間を観察すると、そのときの自分の感情の持ち方で、その人たちがハッピーになったり悲劇になったり、いい人になったり悪い人になったりしますね。
■藤間
そのようなことを入れ込んでやりたいなと思ったのが、今日の大体のストーリーになりました。
そしてやはりこのゼミナールは、日本舞踊・現代舞踊・バレエ・児童舞踊が集う中で、日本舞踊を見せるためには最初はやはり「正当」に行けばというのもおかしいのですけど、邦楽器を使ったものを使うのが一番無難な線かなとも思ったのですけど、あえてそれをはずしたいなという気持ちがありました。
そして日本舞踊の魅力をこういう場所でみせるにはどうしたらいいかといろいろ考えたときに、我々は「すり足」とか歩く速度の中、ただ歩く中に物語を語るということができるのが日本舞踊の魅力だと思うし、動かないで、静の中の動というか、なんとなく動くか動かないかの中の表情とか間の使い方とか空気感というものがやっぱり日本舞踊にあるものだと思います。
■猿若
それはね、近年のえっちゃんの作品から、結構伝わってきますよ。わかるわかる。
■藤間
それとあとやはり体でいかに物語っていくかということで、ちょっと言い訳になってしまいますけど、我々はいつもは所作台などの滑りやすい板の上で踊るので、割とすり足で歩くというのを容易にいたしますけど、
今回の舞台はいつものようには滑らなかったので演技者の方にはきつい条件だったと思います。
けれども日本舞踊の魅力を伝えたいのでなんとか腰を入れてくださいと頼んで、二人には泣かれました。
■猿若
それで今二人とも凄く不機嫌なんですね。そんなことはないですけど。
(笑)
■藤間
あえてタンゴという曲の中で日本舞踊の動きでどれぐらいドラマチックなものができるかという、ある意味自分の中での冒険をさせてもらいました。 |